「公益資本主義」原丈人著 文春新書

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公益資本主義

原丈人その人生については非常に魅力的で破天荒で素晴らしい経歴をお持ちだ。

父親の影響を受けて鉄道模型少年となり、世界鉄道の旅をした。エルサルバドルを旅行中タスマルとサンアンドロスというインディォのマヤ文明遺跡にピラミッドがあることを知り見に行った。そして、何時誰が何のために作ったかを知りたくて考古学を志す事になった。かつてトロイ文明を発掘したシュリーマンのような生き方に憧れた。遺跡の発掘に膨大な資金が必要であったため、アメリカへ行きビジネスを学んだ。スタンフォード大学ビジネススクール経営学大学院時代に光ファイバー・ディスプレイでシステムメーカーを創業した。デイズーニーランドで飛び込み営業し信用を得ることができた。また、光ファイバーが学術誌に掲載され、他の会社からコンピュータ用光ファイバーディスプレイ装置を受注することになった。さらに血管へ光ファイバーを入れ光の反射信号を感知して計算し、血中糖濃度などを分析する医療機器分野へも進出し日本や韓国に委託製造システムをつくり、工場を持たない製造メーカーとなった。この会社で得た自己資金を元にベンチャーキャピタルの会社を立ち上げ財団を作った。ベンチャーキャピタルを知ったのは、スタンフォード大学時代で、キャンパスに来ていたスティーブ・ジョブズなどの若い創業者が事業資金を調達する姿を見て、大きなビジョンと先端技術を持っている若者に、資金を投資する仕事があることを知った。これがベンチャーキャピタルだった。こうして、考古学に役立つ技術を作る会社を育てることを自分の原点にしようと思った。そういえば考古学研究もベンチャーキャピタルもよく似ていると思う。

 

公益資本主義の3本の矢

1.中長期投資 (若い創業者のベンチャー事業)

2.社中配分 (従業員、取引先含め) 

3.企業家精神による改良改善

 

公益資本主義を実現するためのルールづくり

1.「会社の公器性」と「経営者の責任」の明確さ

2.中長期株主優遇

3.「にわか株主」の排除 (HFT超高速取引 へッジファンド、アクティビスト)

4.保有期間で税率を変える

5.ストックオプションの廃止  (役員持株)

6.新技術・新産業への投資の税金控除

7.株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給

8.ROE(自己資本利益率)に代わる新たなROC(会社を支える社中全体への貢献度)

9.四半期決算の廃止

10.社外取締役制度の改善

11.時価会計原則と減損会計の見直し (投資家は最新の価値を知りたいと思う)

12.日本初の新しい経済指標 ベース・オブ・ピラミッドビジネス (ブータンにおける国民総幸福量GNH ,GDPやGNIを補完する)

基幹産業はバイオとITが新たに育っていく。先端医療やICT(情報処理や通信に関連する技術、産業、設備、サービスの総称)やIoT(あらゆるものが相互に接続するネットワーク)の技術革新によって、予防・診断・治療・予後管理といったサイクルが、バイオ・インフォーマスティック(生命情報科学)を要にして誕生してくる。製薬会社が半導体をつくり、電機会社が薬を作る時代が到来する。

 

対談「GNP600兆円実現のために」で藤井聡さんが「僕の最終的な目標は日本のGNPを上げることではなく、国民の給与所得がきちんと上がっていくことです。イメージは池田勇人総理が主導した所得倍増計画の21世紀初頭バージョンです。池田総理の時は資本家が儲かるのではなく、国民給与所得が上がることを目標にしていたからです。」といっていますがわかりやすいです。

 

<追加>

ROEの解説

わかりやすい解説がありました。株主へのリターン ですので、いかに配当を多くするかと考えられるのでないでしょうか。

 

Return On Equityの略称で、和訳は自己資本利益率。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合で、計算式はROE(%)当期純利益 ÷ 自己資本 × 100、またはROE(%)EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)× 100

ROE自己資本利益率)は、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表す重要な財務指標。ROEの数値が高いほど経営効率が良いと言える。