野中広務 差別と権力 魚住昭著

 

 

権謀術数を駆使する老獪な政治家として畏怖された男、野中広務。だが政敵を容赦なく叩き潰す冷酷さの反面、彼には弱者への限りなく優しいまなざしがあった。出自による不当な差別と戦い続け、頂点を前に挫折した奇跡を辿る講談社ノンフェクション受賞作。

加藤紘一氏曰く

「野中さんというのはなかなか能力のある人でね。老練な部分や手練手管の部分もあるけれど、心のなかでは非常にやわらかくて感受性の強い部分を持った人間の魅力がある。イヤホン付き携帯電話を常に持っていてありとあらゆるところとれんらくをとっていた。そのころすでに七十歳を過ぎた政治家としては珍しい図式でねえ。あのとしで政治部だけでなく、社会部の記者とか地方議会の指導者とかの電話にひとつひとつ出て、よくまあエネルギッシュに動いているなあと。やっぱりメディア操作はうまいなあと思いましたね」